〈読書日記〉『コップクラフト』賀東招二
タイトル コップクラフト
著者 賀東招二(がどうしょうじ)
イラスト 村田蓮爾(むらたれんじ)
〈あらすじ〉
15年前、太平洋上に異世界と繋がるゲートが出現した。
ゲートにほど近いサンテレサの街は異世界と地球側・人類世界の玄関口にあたる。
異世界の魔法と地球の兵器・薬物が裏取引され、サンテレサの街は数多くの犯罪がうごめいていた。
サンテレサ市の刑事ケイ・マトバは、ある妖精の失踪事件を追っていた。
異世界からやってきた常識不足で傲慢な鼻持ちならない白皙の美少女剣士ティラナとペアを組み、合同捜査を開始したマトバだったが、事あるごとに彼女と対立してしまい、思うように捜査が進まない。
食い違い、罵り合いながらも、マトバとティラナは共通の敵を追ってゆくうちに、二人の間に不思議な絆が結ばれてゆく…。
〈感想〉
この本、一度アニメで見たことがあります。
ぶっきらぼうで退廃的な雰囲気の警察官と異世界から来た白皙の美少女剣士が、何度もいさかい衝突しながら異世界の魔法の絡んだ難事件を解決していく姿に、当時の私は熱狂しました。
悪意と狂気が渦巻くサンテレサの街で絶えることのない犯罪を見てきたのにも関わらず、揺るぐことのない信念を持つケイ・マトバ。
始終北極の澄み切った氷のような雰囲気をまとうティラナが時折見せる、柔らかい笑顔もまた魅力的。
そして、最初こそ中の悪かった二人も物語の終盤から絆の通った息ぴったりの相棒になっているのもお約束。
アニメで一度この物語を経験しているのですが、実際に活字で書かれている本を読んで、こんな思いがあって登場人物は動いていたんだと、驚くところが多々ありました。
たとえば、犯人を捕まえるのに悪に手を染めた裏世界の情報に詳しいバイヤーの手を借りることになった時の、ティラナの心情が印象的。
『オニール(バイヤー)のような悪漢に頼ったことは、彼女の自尊心をひどく傷つけた。
もう自分は以前のように、正義という言葉を口にする資格がない。
自分が酷く汚れたようで、暗澹とした気分になる。』ー本文より引用
アニメでは、なにもかも決断した上で、厳然たる面持ちで犯人逮捕に赴いていたので、実は彼女がこんなにも葛藤や不条理にもがき苦しんでいたなんて、ちっとも考えていませんでした。
この物語は、主人公とヒロインが互いに衝突しながらも一致団結して犯人を捕まえるポリスストーリーであると同時に、「正義とは何か」「正しさとは何か」を考えさせられる物語でもあるのです。