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〈読書日記〉『雨の日のアイリス』松山剛

タイトル 雨の日のアイリス

著者   松山剛

イラスト ヒラサト

 

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〈あらすじ〉

「【感想レポート(第18回)】テーマ…ロボットと生きがい

僕の生きがいは博士です。大好き博士。アイラブ博士。結婚して博士。以上!」


少女型メイドロボットのアイリス・レイン・アンヴレラはロボット研究者アンヴレラ博士とともに家族同然幸せに暮らしていた。

しかし、ある日突然暴走ロボットの事故によりアンヴレラ博士が亡くなってしまう。

自分のことを妹のように可愛がっていた博士がいなくなってしまい、呆然自失としていたアイリスの元にロボット管理局のスタッフが訪れ、アイリスを解体工場に連れて行ってしまう。

主人を亡くした彼女の行く末は…?

これは心に響く機械仕掛けの物語。

 


〈感想〉

表紙に写っている儚く散る雪のような可愛らしい少女と、あらすじに書いてある「心に響く機械仕掛けの物語」という言葉に惹かれてこの本を手に取りました。

正直、驚きました。

この物語を読んでこんなにも涙ぐむとは、思ってもいませんでした。

アイリスが解体工場へ連れてかれ、博士のことを思いながら、分解されてしまうシーンが印象的。

まずは手足、そして胴体…へと無情にも分解されてしまいます。

ついに顔だけになってしまったアイリス。

その時の彼女の回想がこちら。

『博士。

博士はどうして死んでしまったのですか。

博士。

博士に会いたいです。

会いたくて会いたくて、会いたいです。

今から会いに行ってもよろしいでしょうか。

僕はロボットだけど、人間の天国に入れてもらえるでしょうか。

博士。

あぁ、博士。

人間と、ロボットの天国はご近所でしょうかー』

最後の最後まで主人を思う彼女の姿に、思わず涙。手のひらに落ちて音もなく消える雪片のような儚さを感じます。

ロボット管理局の工場でバラバラに解体されたアイリスは、奇跡的に生きながらえこの後、数奇な運命を辿ります。

この解体工場での出来事は物語の始まりに過ぎません。

主人と死に別れ解体工場から奇跡的に生き残ったロボットが、その後どのような道を歩んでゆくのか。気になる方はぜひ読んでみてください。