〈読書日記〉『n回目の恋の結び方』上條一音著
タイトル n回目の恋の結び方
著者 上條一音 (かみじょういちね)
〈あらすじ〉
ソフトウェア会社で働く凪(なぎ)は、上司から無茶難題を押し付けられ、多忙を極めていた。
社会人になって一番身についたものは何だろうか。
対話力だろうか。
それとも、まったく正しくない人の言葉を正しいと自分に言い聞かせるだけの賢さだろうか。
社会人としての在り方に悩む凪だったが、上司が引き起こしたトラブルに巻き込まれたことをきっかけに、幼馴染の圭吾(けいご)と出会う。
どうやら圭吾は凪のことを長い間片想いしていたらしく…。
これは二人の幼馴染が織りなす長い長い恋の物語。
〈感想〉
この本を手に取った理由は、社会の波に翻弄される一人の女性が幼馴染の男性と恋に落ちる物語だと聞いたから。
この本の見どころはズバリ、幼馴染の女性にずっと恋心を抱き続けてきた圭吾のじれったい恋心かなと私は思います。
この本を読み始めた当初、ずっと遠くで凪のことを眺めているだけの圭吾を、弱々しい人だななんて思っていました。
でも、早乙女(さおとめ)さんという恋のライバルが現れると急に圭吾は男っぽくなります。
「お前がなんと言おうと、俺は絶対にあいつ(凪)から離れるつもりはない。俺が凪から離れる時は、凪がそれを望んだ時だけだ!」
早乙女さんに自分がどれだけ凪のことを想っているのか、ライバルの前で語気荒く宣言する場面があります。
たぶんこのセリフで彼のスイッチが入ったのだと思います。
なかなか凪が振り向いてくれず、彼女に対する恋心を持て余してぐじぐじしていた彼とは心機一転。
彼女に告白して水を得た魚の如く、凪と共に寄り添う圭吾の姿が生き生きと描かれます。
勇気って大切なんだな。
私にも長年思いを寄せる意中の相手がいます。
子供の頃出会って、そのまま長いこと彼女とは会っていません。
古いアルバムを覗き込むようなモノローグな恋が心地よいと感じていました。
自分にとって彼女は「特別な人」です。
でも「特別な人」から「当たり前な特別な人」にしなければいけない時がきっと来るでしょう。
私も幸せになるために、勇気を持って一歩踏み出す時が来たのかもしれません。