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読書日記『オンディーヌ』ジロドゥ

タイトル オンディーヌ

著者   ジロドゥ

訳    二木麻里

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〈あらすじ〉

水の精霊オンディーヌは人間の世界に憧れていた。
ある日、水の精オンディーヌは湖の湖畔を訪れた王国騎士ハンスにハンスに一目惚れしてしまう。
しかし、ハンスには結婚を約束した王国に姫君ベルタの存在があった。
オンディーヌから求婚を迫られたハンスは、ベルタのことを忘れ、オンディーヌと共に過ごすことを選ぶ。
オンディーヌとハンスの恋は不滅のものと思われた。
ハンスを取り戻そうと躍起になるベルタ、宮廷に馴染めず孤立するオンディーヌ、二人の女性に言い寄られ板挟みになるハンス。
人々の思惑や欺瞞、嫉妬、愛が複雑に絡み合い、オンディーヌとハンスの前に立ち塞がる。
オンディーヌとハンスの恋の結末はいかに?

 

〈感想〉注:少しネタバレあり!

『オンディーヌ』のことをどこで知っただろうか。

たしか、アンデルセンの『人魚姫』を読んだときだったか。

訳者解説の欄にオンディーヌの名があったのだ。

“水の精霊(人魚)の登場する物語としてアンデルセンの『人魚姫』、ジロドゥの『オンディーヌ』が有名なのだがー”

へぇ~、そんな物語があるんだぁ。

知らなかった。

“『人魚姫』ではヒロインの人魚が最後に海の泡となって消えてしまい、『オンディーヌ』ではヒロイが記憶を消されてしまい愛する彼を永遠に忘れてしまう”

え⁉︎記憶消されるの?

なにそれ、大好物。

一気に興味がわいた。

甘くて酸っぱい青春のラブコメなんかも大好きだが、川の流れに流される木の葉のように、運命に翻弄されるけっして叶わない恋をえがく物語も好きなのだ。

シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』とか。

『オンディーヌ』を読んで一番ぐっときた場面は、やはりオンディーヌの記憶が消えてしまう瞬間だろう。

正直、ちょっと泣いた。

「ねぇお願い、ハンス。あなたの声を聞かせて。記憶が消える前に、あなたを魂に刻み込むから!」

読み終わった後も、彼女の声が消えない。

彼に対する愛情も、共に過ごした日々の想いでも、すべて忘れてしまう彼女の悲愴と焦燥の入り混じった激しい言葉が、乾いた大地に清水がしみこむがごとく私の胸にじゅわっと広がっていった。

この物語を永らく忘れることはないだろう。

少なくとも自分の吐いた息が外の空気にたなびいて消えていくような、そんな軽い物語ではなかった。