『ジョゼと虎と魚たち 』 田辺聖子-読書日記
〈あらすじ〉
車椅子がないと動けない人形のようなジョゼと、管理人の恒夫。
どこかあやうく、不思議にエロティックな関係を描く表題作のほか、さまざまな愛と別れを描いた短篇八篇を収録した、珠玉の作品集。
ーアマゾンより引用
〈ひとこと〉
田辺聖子さんの作品は過去に一度読んだことがある。
その本は『むかしあけぼの』という時代小説で、宮廷生活を送る清少納言の生涯を繊細な心理描写と共に描いた作品だった。
彼女の書いた二冊の本を読んで、彼女は胸の内に渦巻く感情の波を表現するのがとても上手な作家さんだと感じた。
特に女性の方の心理描写は筆舌に尽くし難い。
短編集ジョゼと虎と魚たちでは恋愛をたしなむ女性が多く登場する。
(恋愛を「楽しむ」という言葉ではないんだよなあ。やっぱり恋愛を「たしなむ」女性たちという表現がぴったりくる)
ダメな男なんだけどなぜか目が離せないとか、男のちょっとした仕草に幻滅してしまったりとか、逆にたわいもないことで心揺さぶられたりとか、昔の恋人からの電話に心ときめいたりとか、そういう繊細なタッチで彼女は女性の恋心をきめ細やかに炙り出す。
静かな恋だ。
音もなく消えてなくなるような雪のような静謐な恋。
そういう恋物語が詰まった一冊でした。
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