読書日記 『九月の恋と出会うまで』松尾由美
タイトル 九月の恋と出会うまで
著者 松尾由美
イラスト 坂本ヒメミ
〈あらすじ〉
「男はみんな奇跡を起こしたいと思ってる。好きになった女の人のために」
暑さも和らいだ九月のはじめの夜、唐突に部屋の壁から声をかけられた志織。
壁の穴から聞こえる低くかすれた声は、同じマンションに住む平野という男の声。
彼曰く、壁の向こうにいる平野自身は「僕一年後の今日を生きている、いわば未来の人間」なのだと言う。
未来を生きる彼は「今」を生きる志織にあるお願いをする。
未来の平野は過去を変えなければならない理由があった。
これは未来と現在が交錯する、時空を超えた愛の物語ー。
〈感想〉
梅雨の長雨も終わり、 7月のうだるような猛暑が顔をのぞかせたころ今日この頃。
ああ、暑い。
これからもっと熱くなる?
冗談じゃない!
ほっといたらロウソクにでも火がともるんじゃないかってくらい蒸し暑いのに。
本を読む手にジワリと汗がにじんでうっとうしい。
この物語の季節は9月。
いくぶん暑さがやわらぎ、涼やかな秋の気配が感じられる頃。
そんな身も心も軽くなるようなこの時期に、恋をするなんてなんて羨ましいのだろう。
あてつけかな?
ちょっと疑う。
こっちは体の成分が容赦なく溶け出してしまう酷暑のかであえいでいるというのに。
なんという格差なんだ!
しかも、未来を生きる謎の男性に声を掛けられ、ヒロインがどんどん彼に惹かれていくロマンチックなストーリーに、なぜ彼が過去を変えなくちゃいけないのか考えていくこの物語のミステリアスな側面がうまく調和して、この物語に好感を持っている自分自身に驚く。
そして、なかなか本を読むのをやめられない自分にも少し腹が立つ。
自分一人では処理しきれないさまざまな感情に翻弄される今日この頃。