〈読書日記〉『こんなにも美しい世界で、また君に出会えたということ。』小鳥居ほたる
タイトル: こんなにも美しい世界で、また君に出会えたということ。
著者: 小鳥居ほたる
〈あらすじ〉
「朝陽くんにお礼がしたくて、ここまで会いに来たの。私の世界をかえてくれた、そのお礼」
高校三年生の朝倉朝陽は学校に通う意味が見出せず、くすぶった日々を送っていた。
そんな朝陽の目の前に現れたのは東雲詩乃という名の謎の少女。
幼い頃に朝陽と出会った彼女は、自分の世界を変えてくれた朝陽のことを忘れられず、恩返しをするために朝陽のもとを訪れたという。
しかし、朝陽本人は彼女のことを思い出せずにいた。
彼女と一緒に日々を過ごすうちに、徐々に詩乃の魅力に惹かれていく朝陽。
そんな中、彼女のスマホをのぞいたことをきっかけに、朝陽は彼女の秘密を知ってしまう。
その秘密とは彼女の東雲詩乃という名は偽名だったということ。
過去に出会った少女は?彼女が名前を偽る理由は?
彼女の真実が明かされる時、あなたはきっと涙する。
〈感想〉
この本を読んで救われた気がした。
ちょうどこの本を手にした時期は、自分が選んだ人生に自信が持てず、少し落ち込んでいた時期だった。
自分のやることなすことがすべて裏目に出て、まわりに迷惑をかけて、「誰にでも失敗はあるからさ」と明るく接してくれる仲間に卑屈さを感じて、心がどんどんすり減っていく。
自分にはこの道は向いていないのかもしれない。
一度芽生えた疑惑はなかなか消えない。
なかなか終わらない梅雨の長雨をうつろなまなざしで眺めるように、心に陰が差してゆく。
この本の主人公は将来に関してグダグダと悩みもだえる点に関しては、私と似ていると感じた。
主人公・麻倉朝陽には将来の夢がない、やりたいこともない。
だから、学校に通う意味が見いだせず、常に無気力。
でも、そんなやるせない現状をなんとかしないといけない危機感は、嫌というほど感じている。
この物語の終盤で、そんな彼に担任の先生が言った言葉が忘れられない。
「簡単なことだよ。自分の選んだ道を“正解”に変える努力をすればいい。たったそれだけのことで、自分の選んだ道の後悔なんて、消えてなくなるの」
そうだ、その通りだ。
自分の選んだ選択肢は、一度この道を実際に歩いてみなければ、正解か不正解かわからない。
誰も、足を踏み出す前に自分の選んだ道が正しいかなんてわかるはずがない。
もっと自分の選んだ道を正解にする努力するべきだったんだ!
そうすれば、自分の一挙手一投足がすべて新鮮に映り、毎日がより鮮やかになるんだ。
もう明けることがないと諦めていた梅雨の長雨に、一途の陽の光が差した。
この光を目指していけばいいのか。
この本を読み終わって深くそう思った。