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『ハーモニー』伊藤計劃 -読書日記

タイトル 『ハーモニー』
著者    伊藤計劃

 

核兵器が世界中で使用された後の物語

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〈あらすじ〉
21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、 人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、 見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア"。
そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―― それから13年。
死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、 ただひとり死んだはすの少女の影を見る―― 『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

ーアマゾンより引用

 

〈ひとこと〉
久しぶりにSF小説を読みました。
ウィル・マッキントッシュの『落下世界』を読んで以来、かれこれ1年ぶりのSF。
(主人公が目覚めると世界は虚空に浮かぶ浮島になっていて、人々は記憶を失い、なぜ世界がこうなってしまったのか、誰一人として覚えているものはいなかった。世界の真実と謎に魅せられた主人公が、手製のパラシュートをもって浮島から浮島へと旅をするSF小説

ハーモニーという物語。
それは近未来の話だ。
人は今朝食べたものから体重、年齢、所得、そして性格までも、自分に関するありとあらゆる情報を開示しなければしなければならない。
そして人々は特殊なコンタクトレンズをはめていて、自分の目の前にいる友人の真横にその個人情報はポップアップで表示される。
自分の日々の生活を開示せず隠していると、「あの人は個人情報を隠していてなんか怪しい」と警察に通報される。
食事は健康バランスを考えて、機械が自動で作ってくれる。
カツ丼やカレーなど糖と脂肪を豊富に含んだハイカロリーな食べ物は口にしてはいけない。
そうい不摂生な生活を続けていると肥満につながるし、そして何より「健康をおろそかにして目先にある快楽にすぐ傾倒してしまう信頼できない人」という烙印が押されてしまう。
(彼が毎日堕落した食生活を送っていることもポップアップで周りに周知される)
さらにコーヒーやお酒は体に害を及ぼす存在として禁止されている。
そんな世界。
なんか、窮屈だな。
安全に気をつけすぎると自由が奪われ、健康に気をつけすぎると素っ気ない食生活に甘んじなければならなくなる。

何かを恐れることは、何かを抑圧することの理由にはならない。

そんなことに気づかされた一冊。

 

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