『ミヤマ物語』 あさのあつこ-読書日記
タイトル『ミヤマ物語』
著者 あさのあつこ
異世界の少年と現代の少年が手を取り合い、不条理な定めに抗うファンタジー。
〈あらすじ〉
夜の世界「ウンヌ」に暮らす少年ハギは、最下層の「クサジ」として水汲みの母トモと貧しい暮らしを送っていた。
誰も姿を見ることが許されない村の統治者「ミドさま」の飲み水に粗相があったとして、トモに死罪が言い渡されるが…!
別次元の現代、学校でいじめにあう孤独な少年透流は、ある日「ウンヌへ行け」という不思議な声を聞く。
生まれも育ちも世界も違う二人の少年が運命に導かれて出会う、ファンタジー大作第一部!
ーアマゾンより引用
〈ひとこと〉
僕は物語を読みながら、素敵なフレーズを探すのが好きだ。
あ、これいいなというフレーズを見つけたら、付箋を取り出して、そのフレーズの上にペトっと貼る。
素敵な言葉との出会いを忘れたくないからだ。
そして想像する。
この言葉を使って物語のストーリーを描けないだろうかと。
たとえば、この『ミヤマ物語』でこんな言葉を見つけた。
"涙は止まらない。青い花びらを濡らす雨粒のように、ほろりほろりと涙が零れる"
たった2行のフレーズを見ただけで、僕の想像の翼が広がる。
ここからは僕の想像の世界だ。
「涙は止まらない」かあ。
じゃあ、恋愛小説がいいな。
青年が夜の街を一人寂しく歩いている。
きっと長年付き合っていた彼女に別れ話を切り出されたのだろう。
青年の足取りは重い。
まるで彼女と過ごした幸せな日々が青年の体にまとわりつき、彼を引き留めているかのように。
夜がかわいそうな青年に同情したのか、ぽつりぽつりと雨が彼を包み込む。
冷たい雨と湯玉のような熱い涙が青年の頬をぬらした。
青年は彼女のことを思い出して、夜の雨空を見上げる。
僕ならこんな場面でこのフレーズを使うな。
"涙は止まらない。青い花びらを濡らす雨粒のように、ほろりほろりと涙が零れる"と。
この『ミヤマ物語』はそんな、僕の想像力を全開にするような素晴らしい言葉で溢れていました。
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