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『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』 ジェームズ・ブラッドワース-読書日記

タイトル
『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』
著者
ジェームズ・ブラッドワース

アマゾンの倉庫とウーバーのタクシーで働いた著者が語る、低所得労働者の実態とは?

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〈内容〉
これは「異国の話」ではない。 英国で〝最底辺〟の労働にジャーナリストが自ら就き、体験を赤裸々に報告。
働いたのはアマゾンの倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバーのタクシー。
私たちの何気ないワンクリックに翻弄される無力な労働者たちの現場から見えてきたのは、マルクスオーウェルが予言した資本主義、管理社会の極地である。
グローバル企業による「ギグ・エコノミー」という名の搾取、移民労働者への現地人の不満、持つ者と持たざる者との一層の格差拡大は、我が国でもすでに始まっている現実だ。
ーアマゾンより引用

 

〈ひとこと〉
以前、イギリス人作者が書いた『動物になって生きてみた』を読んだことがある。
この本は、イギリスに生息する動物の生育環境を作者が実際に体験し、感じたことを本に記したものである。
アナグマの生活を探るために泥炭質の丘陵地に穴を掘ってそこで生活してみたり、カワウソの生活を知るために四六時中身の凍るような川の中で過ごし、そこに息づく野生動物の声を作者は生身で聞いた。
この世には直に体験しないとわからないことがあるのだ。
今回読んだ『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車の中で発狂した』もそんなイギリス人の、直接経験しなければ本質を理解できないという、独特の考え方が如実に現れた本だと思う。
この『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車の中で発狂した』は金銭的にゆとりのあるイギリス人の著者が、イギリスの低所得者の過酷な仕事内容を一年くらい経験して、なんでお金のない人々がこんなにもみじめな生活を送らねばならないのかを考察するというもの。
まあ、薄給に喘ぐ低所得者の生活を自らが経験しないと、日々の頻拍している低所得者の考えなんてわかんないだろの精神で、アマゾンの倉庫やウーバーのタクシーで著者は働く。
そして見えてきた現実。
アマゾンの倉庫でに働く従業員の賃金は、イギリスの法で決められた最低賃金よりも低いということ。
そしてイギリス国内では失業者が溢れかえっている。
だからアマゾン側は不満があればすぐグビにして、また新しい失業者を雇うので、賃金を上げようと思っていてもなかなか上がらない。
あと移民の問題。
アマゾンとかウーバーとか質の悪い最低賃金の現場はルーマニア人の移民が半分以上を占めている。
困窮したイギリス人の就職先は移民が独占していて雇用が奪われた。
(これがイギリスがEU離脱をした理由の一つ。EUに所属している限り移民を受け入れなければいけない)
著者が潜入したアマゾンとかウーバーは、雇ったパートナーのことなんか考えない、やりたい放題の残酷な企業だった。
アマゾンやウーバーで働く従業員は、どんなに理不尽な労働環境でも、アマゾンやウーバーで従順に働かなければならなかった。
たとえ休憩なしで10時間働かなくてはならなくても、たとえ給料が正しく支払われなかったとしても、たとえ保険に加入できなかったとしても、たとえ宣告なしですぐ雇用を解除されても、彼らはこの地獄のような労働環境で働かなければいけなかった。
今、アマゾンやウーバー、あとウォルマートなんかの大型企業が市場に躍進してきて、小さな個人経営の市場は淘汰されつつある。
今、進化したAIがいずれ人間の思考を超え、未来の人間の仕事を奪ってしまうのではないかと危惧されているが、もうすでに人類の雇用はこの大型企業に奪われつつあるのかもしれない。

 

〈グループ〉

 

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