『手紙物語』 鳥野しの-読書日記
タイトル『手紙物語』
著者 鳥野しの
〈内容〉
「手紙」で始まる5つの物語
〈ひとこと〉
「私的、誰も読んでいないけれど僕の中では一等賞」受賞!
誰も読んでいないけれど、面白い本というのがこの世には存在する。
こういうたぐいまれな本に僕は、「私的、誰も読んでいないけれど僕の中では一等賞」を心の中でその本に授けることにしている。
そして、鳥野しの『手紙物語』は漫画では初めての受賞である。
僕は「みんなの知っている面白い本」よりも、「誰も読んでいないんだけど、自分だけがこの本の良さを知っている」という本を読むことに喜びを感じる人間である。
こういう本をどのように見つけるのかというと、やっぱり古本屋をぶらぶら徘徊していると、きらりと光る原石のような本に出会うことが多い。
趣味は家周辺のブックオフを巡ることである。
まあ、僕はブックオフをぶらぶらするのが好きなのだけれど、特にブックオフの100円コーナーを物色するのが好きだ。
なぜなら、自分好みの「みんなの知らない面白い本」というのは、たいてい100円コーナーにしれっと並んでいることが多いからだ。
「誰も読んでいないけれど面白い本」は激安コーナーを見て回るとたいていは1冊、2冊は見繕うことができることを、経験的に知っている。
いわゆる掘り出し物というやつだ。
この漫画も例に漏れず、ブックオフの100円コーナーで見つけた。
手にとって読んでみる。
お、面白いではないか。
なぜこの漫画はあまり知られていないのだろう。
ちょっとよくわからない。
わからないが、面白かったのは確かである。
この短編集の中で、特にお気に入りが『苺とアネモネ』という作品。
女の子が恋をした相手は海の世界のプリンス。
少女のそばにずっといたいと願うが、海の主は彼を海へ連れ戻してしまう。
彼と引き離された少女は、海の不思議な力で彼との思い出を全て忘れてしまう。
そんな折、彼のことを忘れて日常生活をそつなくこなす彼女の元に、一通の手紙が届く。
差出人は見知らぬ青年。
その手紙を読んだ少女は…。
という物語。
「私的、誰も読んでいないけど僕の中では一等賞」をこの漫画に認定しようと思う。
この機会に過去の受賞作も紹介しようと思う。
興味があればぜひ、手にとってみてほしい。
〈私的、誰も読んでいないけど僕の中では一等賞・受賞作〉
『死神を食べた少女 上下』七沢またり
『お父さん、異世界でバイクに乗る』さとう
『雨の日のアイリス』松山剛
『きみに、にゃあと鳴いてやる』村田天
『拝啓、最果ての勇者様へ』三萩せんや
『狐笛のかなた』上橋菜穂子
『声が出なくなったので、会社を辞めて二人暮らし始めました。』神戸遥真
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