『日本SFの臨界点 - 恋愛篇』 伴名練-読書日記
タイトル 『日本SFの臨界点 - 恋愛篇』
編者 伴名練
〈内容〉
『なめらかな世界と、その敵』の著者・伴名練が、全力のSF愛を捧げて編んだ傑作アンソロジー。
恋人の手紙を通して異星人の思考体系に迫った中井紀夫の表題作をはじめ、現在手に入りにくい、短篇集未収録作を中心とした恋愛・家族愛テーマの9本を厳選。
それぞれの作品への解説と、これからSFを読みたい読者への完全入門ガイドを併録。
ーアマゾンより引用
〈収録〉
中井紀夫 『死んだ恋人からの手紙』
藤田雅矢 『奇跡の石』
和田毅 『生まれくる者、死にゆく者』
小田雅久仁 『人生、信号待ち』
円城塔 『ムーンシャイン』
新城カズマ 『月を買った御婦人』
〈ひとこと〉
前回読んだ『日本SFの臨界点-怪奇篇』を読んで、SF小説に興味を抱いていたという現状に、さらに拍車がかかった。
もっとSF小説に出会いたい。
そう思ったので僕は同じ『日本SFの臨界点シリーズ』の恋愛編を手に取った。
『日本SFの臨界点-恋愛篇』を読んで、特に印象に残っているのが、小田雅久仁『人生、信号待ち』と円城塔『ムーンシャイン』。
『人生、信号待ち』のあらすじはこう。とある男性が信号待ちをしていると、きれいな女性と出会う。信号待ちの傍ら雑談して意気投合する二人。するとなぜだか信号待ちしている道路から二人は抜け出せなくなってしまい、一生信号待ちをしながら二人で家庭を築いていくというお話。…。「いや、信号待ちから抜け出せなくなって、信号待ちをしながら一生を過ごすって、どういうこと?」って思った方。大丈夫。あなたの思考と感性は正常です。問題ありません。SFというものは時として科学なんて鼻であしらってしまうほど、奇妙で奇天烈でミステリアスな事象が頻発するもの。そういうジャンルなのです。なので、あらすじを聞いて「ん?」と戸惑うことこそが正しい反応なのです。それにしても、信号待ちで男女の恋物語っていいですよね。ちょっと萌えます。
そしてもう一つの作品は『ムーンシャイン』。これは内容が理解できなさすぎて逆に印象に残っている。たぶん50%もこの物語のストーリーを理解できていないじゃないかな。なのでこの物語の内容を紹介することに全く自信がないけれど、内容を紹介すると、この物語では数学の世界と現代社会という二つの世界が存在し、数学の世界を訪れた主人公がとある少女の存在がきっかけで数学の世界が崩壊してしまうというもの。たぶんそんな感じのストーリー。知らんけど(無責任)。
このSFアンソロジーを読んで、数ある作品の中で、やっぱり自分の好きなシチュエーションのものが印象に残るんだなあと思った。
信号待ちしている間に恋が芽生えたり、雨に打たれるヒロインに傘を貸してあげることで始まる恋物語なんてものが、僕の好きなタイプ。
そして自分の感性にマッチする作品も印象に残るけど、全然内容が頭に入ってこない作品というのも、それと同じくらいの印象に残るんだなあということも改めて知った。
たぶん内容が理解できない悔しさや、自分の読書力の非力さなんてものを痛感するからだろう。
自分の好きなジャンルに出会うのも嬉しいけれど、読んでも読んでも内容が理解できない本、自分の読書レベルはまだ向上させる余地があるという事実を気づかせてくれる本に出会えると、悔しいという思いも確かにあるけれど、やっぱり嬉しい。
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