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〈読書日記〉『火狩りの王』日向理恵子

タイトル 火狩りの王

著者   日向理恵子

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〈あらすじ〉

この世界はかつて一度、死んだ。

人類最終戦争後、大地は炎魔が闊歩する黒い森におおわれ、衰退した世界が広がる。

この世界で「火」は人の命をいともたやすく奪う危険なものだった。

戦争後、人々の体は「火」に近づくだけで体内から発火し灰となってしまうからだ。
この世界で唯一、人が唯一安全に扱える「火」は、森に棲む炎魔から採れる。
炎魔を狩り、火を手に入れることを生業とする火狩りたちは、黒い森を駆け、三日月形の鎌をふるう。
近年、火狩りたちの間でまことしやかにささやかれている噂があった。
「虚空を彷徨っていた人工の星、千年彗星〈揺るる火〉が、地上に帰ってくる。膨大なエネルギーを抱える〈揺るる火〉を狩った火狩りは、火狩りの王と呼ばれるだろう」と。

 


〈感想〉

この本を読み終わった日は、しとしとと雨の降る日だった。

窓の外からくぐもって聞こえる雨だれの音が心地よい。

雨の日は静かだ。

日々騒がしい街の喧騒が雨粒に吸収されてしまったかのように。

この物語もそんな物語だった。

物語の舞台は文明の崩壊した世界。

大地は黒い森で覆われ、凶暴な炎魔が人々を襲う。

人の体は少量の火を近づけただけで、体内から発火してしまうほどに脆くなってしまった。

人々は火を恐れ、身を寄せ合うようにして暮らしている。

灰色で空虚な世界。

この物語で感じる虚無感は、なんだか雨の日に感じる寂しさとなんだか似ているな。