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『女生徒』 太宰治-読書日記

タイトル『女生徒』

著者   太宰治

 

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〈内容〉

女はだめね、鏡に映った姿が憎くてなりません。

太宰治が描く女らしさに悩む女性たちの哀愁漂う短編集。


〈ひとこと〉

インスタで太宰治の『斜陽』を読んだ投稿を見てむしよーに太宰治の作品が読みたくなった。

太宰治というと『走れメロス』なんかが有名で、てっきり「正義感あふれるまっすぐな心音の主人公」を描くのが得意な作家さんなのかなと思ったら、この短編集を読む限り、どうやらことはそう単純ではないらしい。

まあ、つまり、どういうことかというと、この短編集の主人公たちはおしなべて、陰気で根暗で「私なんてもうダメよ」みたいな言葉が口癖なくらい心に翳りのある女性たちだった。

もしかしたら太宰治という作家は、心に闇を抱えた人物の胸がきりきり痛むような悲痛な心の叫びといいますか、そういった悲愴な感情を文章にしたためるのが得意な作家さんなのかもしれない。

「私って、ダメね」的な言葉が、この短編集で何度繰り返されたことだろう。

思うに、この本の主人公たちは「女ってこうあるべき」っていう理想があって、その理想の姿と現実の姿が似ても似つかなくて、その理想と現実の隔たりが彼女たちを疲弊させているように思う。

彼女らは清涼な水で育った汚れなき一輪の百合の花のように、華やかで可愛く、そして健気に生きたいと望んでいる。

でも、人の悪口を言ってしまったり、友達のことを見下してしまったり、逆に嫉妬してしまったり、そんな負の感情が彼女らの胸の内に沸々と湧いてきて、彼女らを困惑させる。

人の悪いところばっかり目につき、まるで自分が世間に染まり汚れてしまったかのように感じて、彼女らはそんな自分が許せない。

読んでいるうちに、彼女らの思い煩う悩みが胸に響いて来て、肺に水が溜まったかのような息苦しさを感じた。

僕は人の話を聞かないし、聞いたとしても行動に移すのはごく稀で、世の中の流行りなんかにはてんで無頓着で、人と合わせることが苦手で、思ったことはすぐに口に出しちゃうタイプで、それゆえに友人関係に亀裂が入ることなんかしょっちゅうで、人に嫌われてもいいから「自分らしさ」を大事にしたくて、あやまたず友達が極端に少ないけれど、僕は欠点だらけで不器用な生き方しかできないそんな自分が、超がつくほど大好きだ。

自分のことが嫌いで好きになれない人がこの世の中にいて、そんな彼女らがその苦しさをそっと耳元で囁いているかのような、見て見ぬ振りはできないリアリティがこの短編集にはありました。

 

〈グループ〉

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