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読書感想文を書いてみた!『アップステージ』課題図書

 僕は今年大学を卒業した新卒社会人なのだが、ある日「もしも今、自分が課題図書で読書感想文を書いたらどうなるのか」という疑問を持った。もしも新卒社会人が読書感想文を書いたらどうなるのか、いざ筆を取ってみると筆が進む進む!むしろ感想文の内容をコンパクトにまとめるのに苦労した。新卒社会人が羽目を外して、読書感想文ではっちゃけましたみたいな、あーこういう人もいるんだなみたいな、軽いノリで読んで欲しいです。もちろん、読書感想文なんて人生で一度も書いたことないよ!と、そこで頭を抱えている中学生の学徒たちに、僕の感想文が少しは役立って欲しいと思っている。じゃあ、ちょっと恥ずかしいけれど、新卒社会人がのほほんと考えなしにさらさらと書き上げた読書感想文を読んで欲しい。

 

タイトル『アップステージ』

著者  ダイアナ・ハーモン・アッシャー

訳者  武富博子

 

 

〈あらすじ〉

シーラは目立つことが大きらいな女の子。学校で「ザ・ミュージック・マン」のミュージカルに取り組むことになり、みんなその話題でもちきりだ。実はシーラは歌がうまい。先生や親友に強くすすめられてオーディションを受け、カルテットのひとりに選ばれる。練習を重ねるうち、シーラはこのミュージカルを心から愛するようになる。さまざまなトラブルや淡い恋の芽生えのなか、とうとう幕を開ける日がやってきて……というユーモアいっぱいの物語。

ーアマゾンより引用

 

〈読書感想文〉

設定

性別:男

学年:中学2年生

部活:帰宅部

 

 

 課題図書『アップステージ』を手に取った理由はいくつかあるが、一番の理由は表紙がカラフルでいちばん読みやすそうだったからだ。読書といえば教科書の文章くらいしか読んでこなかった自分でも、楽しく読めるんじゃないかなというかすかな希望を胸にえがき、本屋さんで平積みにされていたこの本をそっと手に取る。本屋さんの中でも特に目立つスペースに置かれていた単行本。手に取ってみるとずしっと重い紙の重さを感じとり、この本が教科書よりも重いというい当たり前の事実に驚いた。これからこれを読むのかあと、あきらめにも似たやるせなさに、本屋の片隅でこの本を見つめながら茫然とため息をついたのを覚えている。これから42.195kmを自力で走りなさいと言われたレベルで重い腰があがらない。でも中学校の課題図書で読書感想文を書かなくてはいけないのだからしょうがない。家に帰ってふてぶてしく課題図書を読むことにする。

 この本を読み終わるのに5日間の日数を要した。僕たち中学二年生の夏休みは多忙を極めるのだ。この本を拝読なさる大人になってしまった先生方には、僕たちの抱える不条理極まりないこのやるせなさなんて、わかるまい。てか、わかってたまるか!僕たち中学生は、100人のプレイヤーが最後の一人になるまで争うバトルロワイアルゲーム『フォートナイト』で武器の練度をあげるべく日夜研究し、大型モンスターの狩りを楽しめるハンティングアクションゲームモンスターハンター』では友達のドロップアイテム集めにも快く手伝うという社交辞令にも付き合わなければならない。夜になれば、たまりにたまったネットフリックスのアニメたちを、家族の不平不満を背中に受けつつ、一気読みしなければいけないのだ。たった一冊の本を読むのに、青春真っただ中にある中学二年生の限りなく貴重な5日間を、この本を読むことだけに使ったのだ。もっと僕のことを褒めてほしい。ちなみに、友達の田中に課題図書を読むのにどのくらい時間がかかったか聞いてみたら、「え?あんなの2日もあれば読み切れるよ」とさらっりと言われ、愕然とした。

 5日間を要してこの物語を読んだ。中学生の少女が学校の劇団に選ばれ、内気でシャイなのだけれど、前向きに演劇に打ち込む。そんな健気な少女の姿がこの物語で描かれていた。でも、僕は読書感想文で何を書けばいいのかなんて、さっぱりわからない。この本を読んで僕の身にどんなことが起こったかをつれづれなるまま、のべつまくなしに語ろうと思う。

 誰もが洗面所の鏡の前で歯磨きをするのだと思う。僕も例に漏れずありきたりな中学生なので、この日の朝は洗面所の鏡の前で歯磨きをシャカシャカした。何を思ったのかその時、鏡の前で笑顔の練習をしてみようと思い立った。歯磨きを加えたまんま口角をあげ、にーと笑ってみる。そのままその笑顔を維持。普段使わない顔の筋肉がぴくぴく痙攣しているのを感じた。ためしに「おはよう」と鏡の自分に声をかけてみる。静かな洗面台で自分の声だけが響いた。髪の毛をかきあげながらけだるげに「おはよう」。あれ?ちょっとカッコよくないか、今の自分。じゃあ、次は伏し目がちにおずおずと「おはよう」。ふーん、これはこれでカワイイじゃん。ちょっと面白くなって、意味もなく鏡の前でかっこつけてセリフを連呼する。鏡に映っている自分は自分なんだけど、自分じゃない。ドアをパタンと閉めてまた別のドアをガチャっと開けるみたいに、知らない自分の一面が見えてくる。あ、”演じる”ってこういうことなのかなと、何種類もの「おはよう」を通じて、なんとなく納得する。ああ、今日は朝から気分がいい。意気揚々眺めのセリフに挑戦しようと息巻いた時、歯磨き粉の混じったよだれがたらりと垂れて母に怒られた。よだれを拭くついでに洗面所の掃除もさせられた。運命の女神に調子に乗るなバカと、頭を子図かれたような気がして、その日の朝は気分が盛り下がった。

 時間はかかるは怒られるはで、本を読んでもろくなことが起こらない。でも本を読んで、感化されて、素直に行動に移す自分はなんだか愛らしいなあと思う。いい本とは、読んだ後に自分の行動に変化が生じるような本だと、どこかのユーチューバーが言っていた。そういう意味で言うと、この本を読んで限りなく誤差に近い範囲であるが読後、普段とは違う行動をとった時点で、『アップステージ』という物語は僕にとって良書だったということなのかもしれない。